気持ちはわかる空回り


さて、実世界上にもネットワーク上にも、したり顔のウォッチャーばかりが出現してきている昨今ですが、これは同時に気持ちはわかるが空回りをしてしまっている店、運動、人が目立つ時代であるとも言えましょう。例えば誰も見向かないのにエコロジーについて呼びかける市民団体、青年団、そういったものが代表になりがち。会社にみられる組合運動も似ているかもしれない。宗教色はないのに、残念ながらその一生懸命さがこの時代では参入障壁となっている好例といえましょう。(俺だけですか?)

で、そんな空回りは個人経営のショップにも出現しがちであります。

先日、仙台(北環沿い)をウロウロしてて発見したとあるラーメン屋。「不味かったらお代はいりません!」の力強い宣言文を記した看板が気になり、急遽いってみることにしました。もちろん不味かったら払う気なしで。環状道路から少々入った本来ならわかりにくいところにあるラーメン屋なのですが、これでもかというくらいの案内看板の連続により、問題なく到着した、の、でしたが。

店の外に掲げられた手書きの看板には、「自信があるのでラーメンとご飯しかメニューはありません! 不味かったらお代はいりません!」と高らかに謳う鉄人ガンマの切り抜きが。おおかた脱サラした主人の心の支えが鉄人ガンマなのかもと想像させるに十分である。店内は手作りログハウス風ともカウンターバー風とも言えない「何かいろいろと自然木材で工夫した風」ながら、白を基調としてしまっていて、なんだかわからないまま夏になってしまった民家の風景のよう。置いているマンガは状態の悪いモーニングのコミックばかり。もちろん鉄人ガンマが中心。あともりやまつるの親父もあった。

そしてメニューは
「長男ラーメン
 長男ラーメン特製
 次男ラーメン
 次男ラーメン特製
 三男ラーメン(家出中)
 長女ラーメン」
といった記述。長男は醤油、次男は味噌、特製はチャーシュー、ネギ、麺増量のようである。三男はなんだったんだ? 塩だったか? というか家出させてていいのか? 長女は冷やしのようだが、自信がある割にメニュー多くないか?

そしてテーブルの上には食べ方の但し書きが。「特製練り唐辛子とコショウをラーメンに加えてください!これは強制です! 」強制か!

白髪の混じる長髪を後ろに束ねたペンションのオーナー風おやじに長男と次男をオーダーしてしばらくすると、他のテーブルのラーメンが完成した模様…と思った瞬間、ドコドコドコドコドンッ! 店内に太鼓音が。厨房から顔を出したシェフ? が、ラーメン完成の合図を太鼓の乱打によってアピールする仕組みとなっていた。不意の太鼓乱打は心臓に悪い。

ほどなく麺(長男と次男)が到着。乱暴に運ばれることをもともと想定していたのか、丼の下には皿が添えられていた。もちろん乱暴に運んだので下皿にはスープこぼれまくり。もともと薄い丼なので下皿を添えた方がいい、じゃんがらのぼんしゃんラーメンとはちょっと違う理由のようである。

長男を一口。
「…」
二口。
「…?(牛骨ベースにしては薄いな…)」
強制されていた食べ方を実践します。
「(強制しなかったほうがよかったんじゃないかな)」
で、次男を一口。二口。
「…?(味噌ベースにしては薄いし、業務用ニンニクの臭いしかしないな…)」
三口、といこうとしたところ、連れが「これなんJARO?」とレンゲを差し出した。

「…
だね」
「…」
「すいませーん出ますね〜」

不味かったから、と主張する間もなく、退出する理由ができました。なんつうか、空回りする前にちゃんとしておくことって、いっぱいあるんだよねえって思いました。


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